今、シリコンバレーで最も注目を集めている人物の一人が、テック起業家のブライアン・ジョンソンです。年間約200万ドル(約3億円)を投じ、自身の体を実験台にして老化を逆転させるプロジェクト「Blueprint」に取り組んでいます。
目標は、全身の臓器や身体機能を18歳レベルに近づけること。毎日の精密なデータ測定をもとに、食事・運動・睡眠・サプリのすべてを決めるというアプローチを続けています。
2026年現在、48歳の彼がBlueprint公式として報告している数値はこうです。
- 老化のスピード:0.50(自己ベストは0.48)(DunedinPACE指標による。1年で0.5年分しか年を取らない計算)
- 心肺機能:同年代の上位1.5%(「18歳レベル」はジョンソン側の解釈を含む)
- 肌年齢:最大9歳の若返り(独自の測定による自己申告)
いずれも被験者が本人1人だけの実験であり、独立した第三者による検証は行われていない数値です。ただ、彼の実践の中には、私たちが日常に取り入れられるヒントも少なくありません。今回はその入り口として、研究データが比較的揃っている「定番の成分」を一緒に整理してみたいと思います。
この記事の結論(忙しい方はここだけ!)
100錠超からシンプルなスタックに整理。成分と摂取タイミングは?
かつては「1日100錠以上」という数字が話題になりました。でもこれは、100種類の異なるサプリを飲んでいたわけではありません。27〜40種類の成分を、それぞれ複数の錠剤やカプセルで摂取した結果、1日の総数が100錠を超えていたというものです。
現在はデータに基づいて効果が確認できないものを随時外しながら、カプセルをひとまとめにするなど最適化を進め、現在は、NMN・CoQ10・オメガ3・クレアチン・ビタミンD3・ビタミンK2などを中心とした、よりシンプルなスタックへと整理されています。直近ではラパマイシンを副作用のため中止し、低用量リチウムとNDGAを追加するなど、常に更新が続いています。
現在の摂取タイミングは、午前6時〜正午(12時)という時間の食事ウィンドウの中に3食をすべて収める形です。起床直後にサプリを摂取し、朝食時にNMN・Ca-AKG・CoQ10・ビタミンD3・EPA(オメガ3)・スルフォラファン・ジンジャー・ガーリック・フィセチン・リコペン・スペルミジン・ビタミンK2/K1などを。1日最後の食事となる午前11時~正午(12時)頃にはターメリック(クルクミン)・発酵ガーリック・NAC・ダークチョコレート・エキストラバージンオリーブオイルなどを摂取しています。就寝前には低用量メラトニン(300mcg)・タウリン・NDGAなどを組み合わせています。
1日の最後の食事は正午(12時)——いわゆる「夕食」という概念がなく、すべての食事を午前中に終えるという、かなり特異なアプローチです。

なお、メトフォルミン・アカルボース・甲状腺ホルモン薬などの処方薬も含まれており、これらは医師の管理下でのみ使用されるものです。
「体に良さそう」ではなく「数値が示すから飲む」
ジョンソンのアプローチで特徴的なのは、毎月の血液検査と全身計測のデータをもとに、医師チームと一緒に成分と量を調整し続けているという点です。病気になる前からデータに基づいて心身を最適化し続ける、最先端の予防医療の考え方——Medicine 3.0(病気になる前からデータに基づいて心身を最適化し続ける、最先端の予防医療の考え方)的な発想です。
医師の管理なしに多種多様なサプリを一度に大量に飲むことは、肝臓や腎臓への負担(カクテル効果)を生むリスクがあります。彼のリストをそのまま真似るのではなく、「エビデンスが比較的揃っている成分を、自分の体に合わせて選ぶ」というアプローチの方が、私たちには安全ではないでしょうか。
取り入れやすい5つの成分
ジョンソンのリストの中から、研究データが比較的揃っていて、かつ日常に取り入れやすい5つの成分を整理してみます。
① ビタミンD3——現代の日本人に最も不足しがちな成分
免疫機能・骨の健康・筋力維持との関わりが確認されており、テロメアの長さへの影響も示唆されています(American Journal of Clinical Nutrition, 2025)。
本来、ビタミンDは「日光のビタミン」と呼ばれ、私たちの肌が紫外線(UVB)を浴びることで体内で自動的に合成される特殊な仕組みを持っています。しかし、現代社会における屋内中心のライフスタイルや、徹底したUV対策(日焼け止め)によって、現代人の日本人は圧倒的な「日光浴不足」に陥っています。
実際に、日本の研究では対象集団の約半数以上がビタミンD不足または不十分な状態と報告されており(Archives of Osteoporosis, 2025)、日本人にとって身近な不足成分の一つです。日本人9万人以上を対象にした研究では、ビタミンD摂取量の高いグループで全死因死亡リスクの低下が確認されています(European Journal of Epidemiology, 2023)。ただし「摂れば摂るほど良い」とは言えず、適切な量を保つことが大切です。
研究では1日2000 IU(50μg)の補充が有効とする報告があります(Nutrients, 2024)が、腎臓疾患のある方や薬を服用中の方は事前に医師に相談してください。(※ただし、日本の過剰摂取の上限値は1日4000 IUとされているため、上限を超えない注意は必要です)。

② CoQ10——「なんとなく疲れやすくなった」に関わる成分
ミトコンドリア(細胞のエネルギー産生を担う器官)に不可欠な成分で、加齢とともに体内産生量が落ちていきます。1,126名を対象としたメタ分析で、疲労感の軽減に有効であることが示されており(PubMed, 2022)、30代以降で「以前より疲れが抜けにくい」と感じる場合の選択肢として、比較的根拠のある成分です。
③ オメガ3(EPA/DHA)——老化速度に関わる可能性がある成分
慢性炎症は老化加速の主要因の一つとされています。2025年のNature Agingに掲載されたDO-HEALTH試験では、オメガ3の補充がDNAメチル化時計(生物学的年齢の指標)の加速を抑制する可能性が示されました。今回紹介する5つの中でも、最もエビデンスが充実している成分の一つです。

④ クレアチン——筋肉・骨・脳を同時にサポートする成分
筋トレ向けのイメージが強い成分ですが、近年は長寿科学の文脈でも注目が高まっています。2026年発表のレビューでは、筋肉量の維持・骨の健康・認知機能の強化を通じて健康的な老化を支える可能性が示されています(Tandfonline, 2026)。685の臨床試験を分析した研究で安全性も確認されていますが(JISSN, 2025)、腎臓疾患・糖尿病・高血圧などがある方は医師に相談してください。
⑤ ビタミンK2——血管と骨を守る、見落とされがちな成分
動脈へのカルシウム沈着(石灰化)を防ぎ、血管の柔軟性を保つ働きが示されています。2025年の研究では認知機能低下の抑制との関連も報告されており(Frontiers in Aging Neuroscience, 2025)、ビタミンD3との相乗効果も示唆されています。ビタミンD3を取り入れるなら、一緒に検討したい成分です。
サプリを「味方につける」ための2つの鉄則
鉄則1:土台が9割、サプリは残り1割
ジョンソン自身も、計算し尽くされた食事・毎朝の運動・午後8時半の就寝という土台があるからこそ、これだけのサプリが活きています。睡眠・食事・運動という基本が整っていない状態では、サプリの効果は限定的です。なお、ジョンソンの食事戦略については、別の記事で詳しくまとめています。

鉄則2:まず自分の「現在地」を知る
毎年の健康診断の結果を見直すことが、最初の一歩になります。ただし通常の健康診断にはビタミンDの測定は含まれていません。ビタミンD3は体内で「25OHビタミンD」という形に変換されて血液中に蓄積されます。この値を測ることで、体内のビタミンDが足りているかどうかの参考になります。かかりつけ医に「25OHビタミンDを測りたい」と伝えると自費で対応してもらえます(クリニックにより数千円〜1万円程度)。自宅で採血して郵送するセルフ検査キットも市販されていますが、結果の解釈については医師に相談するのがよいでしょう。
腎臓の状態が気になる方は、健康診断の結果票にある「クレアチニン」と「eGFR」という項目が参考になります。クレアチニンは筋肉の代謝によって生じる物質で、eGFRは腎臓の働きを示す指標です。数値の解釈は、かかりつけ医に相談してください。
「何から始めたらいいかわからない」という場合は、ビタミンD3とオメガ3から試してみるとよいかもしれません。体調の変化が気になる場合や持病がある方は、事前に医師に相談してください。

大切なのは「自分の体に何が必要か」を問い続ける姿勢
大富豪が本気で行う、金に糸目をつけない老化逆転プロジェクト…と言われるとつい妄信したくなる私たちですが、ジョンソンの実践は、徹底した「人体実験」の一つです。彼の数値は自己申告であり、万人に通じる正解ではないことを忘れてはいけません。
そのことを頭の片隅において、次回は、NMN・タウリン・グルコサミンなど「現時点では、慎重にすべき成分」のエビデンスを深掘りしていきます。
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参照ソース
Bischoff-Ferrari HA et al. “Individual and additive effects of vitamin D, omega-3 and exercise on DNA methylation clocks of biological aging.” Nature Aging, 2025. DOI: 10.1038/s43587-024-00793-y
Pludowski P et al. “Vitamin D Supplementation: A Review of the Evidence Arguing for a Daily Dose of 2000 IU.” Nutrients, 2024. DOI: 10.3390/nu16030391
Trends in vitamin D deficiency in Japan. Archives of Osteoporosis, 2025. DOI: 10.1007/s11657-025-01601-9
Vitamin D intake and all-cause mortality in Japanese adults. European Journal of Epidemiology, 2023. DOI: 10.1007/s10654-023-00968-8
Lee YH et al. “Effectiveness of CoQ10 Supplementation for Reducing Fatigue: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Frontiers in Pharmacology, 2022. PubMed PMID: 36091835
Candow DG et al. “Creatine supplementation as an adjunct to improving healthy aging.” Tandfonline, 2026. DOI: 10.1080/30653495.2025.2565997
Kreider RB et al. “Safety of creatine supplementation.” Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2025. DOI: 10.1080/15502783.2025.2488937
Roumeliotis S et al. “The role of vitamin K2 in cognitive impairment.” Frontiers in Aging Neuroscience, 2025. DOI: 10.3389/fnagi.2024.1527535
Attia P. Outlive: The Science and Art of Longevity. Harmony Books, 2023.
Bryan Johnson Blueprint official. blueprint.bryanjohnson.com, 2026.
