テック億万長者が試す「不老サプリ」の最新エビデンス。慎重にすべき成分とその理由とは?

前回の記事では、年間約3億円を投じて老化逆転プロジェクト「Blueprint」に挑むブライアン・ジョンソンのサプリスタックから、データが比較的揃っている5成分を紹介しました。

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今回は「有望だけど、まだ慎重にすべき成分」を取り上げます。日本でサプリとして比較的入手しやすいものに絞っています。あくまで筆者が現時点で整理した情報ですので、ご自身でも調べた上で、納得できる情報を参考にしてみてください。

この記事の結論(忙しい方はここだけ!)

慎重にすべき成分

NMN/NR——「話題の筆頭」の最新の解釈

今、長寿サプリの中で最も話題になっているのがNMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)とNR(ニコチンアミド・リボシド)です。加齢とともに低下するNAD+(細胞のエネルギー産生・DNA修復に関わる物質)を補う目的で使われています。

2026年1月にNature Metabolismに掲載された試験では、NMNとNRがいずれも血中NAD+をおよそ2倍に増加させることが確認されました(Christen et al., Nature Metabolism, 2026)。「NAD+を上げる」という点では、効果が出ています。

でも、問いはその先です。「NAD+が上がることが、実際に老化防止につながるのか」——2025年のメタ分析(10のRCT)では、NMN/NRが筋肉量・筋力・身体機能の改善をもたらすエビデンスは確認されませんでした。2026年2月の試験でも、NMNが運動後の炎症を抑える一方で、筋肉のミトコンドリア増加を抑制する可能性が示されており、単純に「良い」とは言い切れない状況です。

日本では現時点でサプリとして販売されていますが、長期的な効果と安全性はまだ研究途上です。価格も高めなので、「まず試す」より「研究の動向を見ながら検討する」くらいの距離感が、今は適切かもしれません。

タウリン——Science誌で注目されたが、一転して疑問符へ

2023年にScience誌に掲載された研究(Singh et al.)で、タウリン欠乏が老化の一因である可能性が示され、マウス・霊長類での健康寿命延長が確認されました。一時は「最も有望な長寿サプリ」とも呼ばれ、ジョンソンも1日3gを摂取しています。

ところが2025年、Aging Cell誌に掲載された研究で、ヒトにおいてタウリン濃度と年齢・筋力・身体機能との関連が確認されず、「タウリン欠乏がヒトの老化の主要因」という仮説に疑問が呈されました(Marcangeli et al., Aging Cell, 2025)。

動物実験では有望。でもヒトでは未確定——NMNと同じ構図です。タウリン自体は魚介類や肉類にも含まれており、安全性は比較的高い成分です。ただ「老化に効く」目的で積極的に補充すべきかは、まだ判断が難しいところです。

グルコサミン——「関節サプリ」を超えた、意外な長寿との関係

関節ケアのサプリとして長年使われてきたグルコサミンですが、長寿科学の文脈でも研究が進んでいます。

マウスの寿命延長(Nature Communications, 2014)に加え、46万人以上のゲノムデータを用いた研究では、グルコサミン濃度が高い人ほど寿命が長い傾向が示されています(Clinical Nutrition ESPEN, 2022)。別の観察研究でも、定期的な使用が全死因死亡リスクの低下と関連することが報告されています。

ただし「慎重にすべき」理由が2つあります。長寿との関連データは多いですが、すべて「飲んでいる人は長生き」という観察データに過ぎません。「健康意識が高い人が飲んでいるから、結果的に長生きなだけでは?」という疑問が残ります。これを証明するには、飲む人と飲まない人をくじ引きで分けて思い込みを排除して比べる「ランダム化比較試験(RCT)」が必要ですが、人間を対象にした直接的な試験はまだ限られているため、現段階で「長寿に効く」と断言はできません。

2つ目は、体質や持病への影響(エビ・カニ由来による甲殻類アレルギー、緑内障、特定の服用薬との相互作用など)が具体的に報告されている点です。最近ではアレルギーを起こしにくい「植物由来」のサプリも登場していますが、持病や常用薬がある方は必ず医師へ相談することが必要です。

今後の研究に注目

今回紹介した3つの成分は、それぞれ慎重にすべき理由が少し異なります。

NMN/NRとタウリンは「動物実験では有望だが、ヒトでの効果がまだ十分に確立されていない」という段階です。グルコサミンは安全性の実績は長くありますが、「長寿に直接効く」という因果関係の直接的な確認がまだ限られており、注意が必要な方もいます。

試したい場合は、医師と相談した上での判断が現実的です。なお、ラパマイシン・低用量リチウム・メトフォルミンなどの処方薬については自己判断での使用は危険であり、今回は扱っていません。

長寿科学は日々アップデートされています。「慎重にすべき」成分が「取り入れやすい」側に移動していく可能性もあるでしょう。今後の研究を追いながら、このブログでも更新していきたいと思っています。

次回は、ジョンソンの食事戦略——午前中に食事を終える男が実践する「3つの食事のルール」をひも解いていきます。

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参照ソース

Christen S et al. “The differential impact of three different NAD+ boosters on circulatory NAD and microbial metabolism in humans.” Nature Metabolism, 2026. DOI: 10.1038/s42255-025-01421-8

AliveLongevity. “Does NMN Actually Work? What 2025 Human Trials Say.” March 2026.(2025年メタ分析:NMN/NRは筋肉量・筋力改善なし)

RCT (February 2026). “NMN supplementation suppressed exercise-induced inflammatory signaling but abolished mitochondrial replenishment.” Renue By Science compilation.

Singh P et al. “Taurine deficiency as a driver of aging.” Science, 2023. DOI: 10.1126/science.abn9257

Marcangeli V et al. “Experimental Evidence Against Taurine Deficiency as a Driver of Aging in Humans.” Aging Cell, 2025. DOI: 10.1111/acel.70191

Weimer S et al. “D-Glucosamine supplementation extends life span of nematodes and of ageing mice.” Nature Communications, 2014. DOI: 10.1038/ncomms4563

Shintani H et al. “Genetically predicted glucosamine and longevity: A Mendelian randomization study.” Clinical Nutrition ESPEN, 2022. DOI: 10.1016/S2405-4577(22)00211-X

Bryan Johnson Blueprint official. blueprint.bryanjohnson.com, 2026.

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この記事を書いた人

ウェルネス・ウェルビーイング専門メディアの編集者として、10年以上にわたり医師や専門家への取材・企画に携わる。

日々アップデートされる長寿科学(Longevity)の情報を、中立・客観的な視点で整理し、考察を深める。若さへの執着ではなく、自分らしく生き切るための「老化ハック」を探究中。

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