年間約3億円を投じ、自身の体を実験台にして老化を逆転させるプロジェクト「Blueprint」。
これに取り組むテック富豪ブライアン・ジョンソンの実践において、サプリと同じくらい——いや、ある意味それ以上に徹底されているのが「食事」です。
「1日3食、バランスよく」という常識とはかけ離れた、驚くべきルーティンがあります。1日のすべての食事を午前11時〜正午頃までに終える。そして毎日同じメニューを食べ続ける。美味しさや楽しさより、細胞が求める栄養を100%満たすことを優先した、徹底的にデータ駆動の食事です。
今回は、そのルーティンの背景にある「3つのルール」を整理してみます。
この記事の結論(忙しい方はここだけ!)
- 食事を午前11時〜正午頃までに終えることで、午後〜翌朝まで約17時間の空腹時間を確保している
- 毎日同じ2食(Super Veggie+Longevity Protein)で栄養密度を最大化している
- カロリーは約2,250kcalに設定——「制限」より「最適化」という発想
ルール①:午前11時〜正午頃に食事を終える「時間制限」
ジョンソンの1日の食事は、午前6時45分頃の最初の食事から午前11時〜正午頃の最後の食事まで、わずか4〜5時間の窓に収まっています。残りの約17〜18時間は何も食べません。
なぜそんなに早く終えるのか。目的は2つです。
一つ目はオートファジー(細胞の自己掃除機能)の活性化。食事をしていない時間が続くとmTOR(細胞の成長シグナル)が抑制され、細胞が古くなった部品を分解・リサイクルするモードに入りやすくなります。
二つ目は睡眠中の胃腸への負担をゼロにすること。就寝前(午後8時30分)から逆算して早い時間に食事を終えることで、寝るまでに胃腸の消化活動を完全に終わらせ、睡眠の質を極限まで高めることができます。
近年の研究でも、体内時計(サーカディアンリズム)に合わせた早い時間帯に食事を終える「早期時間制限食」は、代謝改善・血糖値の安定・睡眠の質向上と強く関連することが示されています(Cell Reports Medicine, 2025)。
ただし、注意点があります。午後に活動が集中する一般の方がそのまま真似すると、エネルギー不足や集中力の低下を招くリスクがあります。また、タンパク質摂取が集中しやすいため、筋肉量の維持に影響する可能性もあります。「何時間空腹にするか」よりも「自分のライフスタイルに合った空腹時間を作る」という発想の方が、現実的なアプローチです。
ルール②:1グラムも無駄にしない「高栄養密度」
ジョンソンが毎日食べているのは、主に2つのメニューです。
Super Veggie(スーパーベジー)
ブロッコリー・カリフラワー・芽キャベツ・キノコ類・にんにく・生姜などを蒸してオリーブオイルとスパイスで和えたもの。抗炎症・抗酸化・腸内環境の改善に関わる植物性化合物を、一度に大量に摂取するためのメニューです。

Longevity Protein(旧・Nutty Pudding)
マカダミアナッツ・くるみ・チアシード・亜麻仁・ベリー類・ポメグラネートジュースなどをブレンドしたもの。2025年4月に「Longevity Protein」に名称変更されました。オメガ3・ポリフェノール・良質な脂質を凝縮したメニューです。

3食目は毎日変えており、植物性の全粒穀物や豆類・野菜を中心に約500kcalの食事を摂ります。
「美味しい食事」ではなく「細胞が求める栄養素を満たすための食事」——ジョンソン本人もそう割り切っています。毎日同じものを食べることに苦痛を感じる人には向かないアプローチです。
一般の方が取り入れられる本質としては、「加工食品を減らし、色の濃い野菜と良質な脂質(オリーブオイル・ナッツ・アボカド)を増やす」というシンプルな方向性です。完璧なメニューを再現しなくても、食材の「質」を意識するだけで、かなりの部分は取り入れられます。
ルール③:老化のブレーキを踏む「カロリーの最適化」
ジョンソンの1日の摂取カロリーは約2,250kcal。活動量の多い成人男性の平均的な必要量に近い数字ですが、重要なのはカロリーの「質」の徹底的な最適化です。「カロリーは一つひとつ、体内への入場資格を証明する必要がある」という彼の言葉が印象的です。
カロリー制限と長寿の関係については、動物実験での寿命延長効果が数多く報告されており、ヒトでも老化のペースを遅らせる可能性が示されています。CALERIE試験(ランダム化比較試験、Columbia University, 2023)では、15%のカロリー制限が老化のペースを有意に遅らせることが確認されています。
ただし、慢性的なエネルギー不足は免疫力の低下・骨密度の減少・ホルモンバランスへの影響といったリスクも伴います。「カロリーを減らせば長生きできる」という単純な話ではなく、ジョンソンの場合も30人の医師チームによるモニタリングのもとで行われていることを忘れてはいけません。
一般の方が参考にできる本質は「何をどれだけ食べるか」より「何を食べないか」を意識することかもしれません。超加工食品・精製糖・過剰な動物性脂肪を減らすだけで、カロリーの「質」は大きく改善します。
「細胞を飢えさせ、最高の栄養で満たす」という引き算の食事
ジョンソンの食事は一見「極端」に見えますが、本質はシンプルです。空腹の時間を意図的に作り、食べる時間には栄養密度の高いものだけを入れる——細胞を飢えさせることと、細胞を最高の栄養で満たすことを、交互に繰り返すという発想です。
そのまま真似することは難しくても、「空腹の時間を少し長くする」「食べるものの質を少し上げる」という小さな変化から始めることはできます。
次回は、ジョンソンの食事にも多く登場する「食事から摂れる抗炎症食材」を、長寿科学の視点から整理していきます。
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参照ソース
Waziry R et al. “Does caloric restriction slow the process of biological aging? Evidence from the CALERIE trial.” Columbia University / Journals of Gerontology, 2022. DOI: 10.1093/geroni/igac059.391
Redman LM et al. “Caloric restriction in humans: Impact on physiological, psychological, and behavioral outcomes.” Antioxidants & Redox Signaling, 2023.(CALERIE試験・15%カロリー制限で老化ペース低下を確認)
Cell Reports Medicine (2025). “Circadian-aligned eating patterns and metabolic health: a review of recent evidence.”(早期時間制限食と代謝改善・睡眠との関連)
Hone Health. “Bryan Johnson’s Anti-Aging Diet: Is It Healthy?” December 2025. honehealth.com(Super VeggieとLongevity Proteinの詳細・カロリー2,250kcal)
Bryan Johnson Blueprint official. blueprint.bryanjohnson.com, 2026.
